森の中にひっそり佇む安慶名城。実際に訪問してビックリ、高石垣がめぐるワイルドな城跡でした。世界遺産群には選ばれてはいませんが、沖縄では珍しい輪郭式の縄張りと云われており、城マニアは訪問して損はしませんよ。
2020年12月登城
満足度:★★★★★
歴史
正確な築城年代は分かっていませんが、14世紀に安慶名大川按司によって築かれたと伝えられています。15世紀中旬に現在見られる石垣が築かれました。
安慶名大川按司は順調に勢力を伸ばしますが、1526年に中央集権を推進する第二尚氏・3代尚真王によって攻められます。その結果、安慶名城は落城し、安慶名大川按司も滅亡しました。
交通アクセス
行きやすさ:★★★★★
那覇バスターミナルから、沖縄バス77番 名護東線に乗車70分、「旧安慶名」で降りて徒歩7分。または、琉球バス23番 具志川線か沖縄バス27番 屋慶名線に75分乗車、「安慶名」で降りて徒歩12分。那覇から安慶名までの乗車時間は長いですが、バス停から城入口までは平坦なので、比較的楽に着きます。
勝連城とハシゴすることも比較的容易で、「西原」停留所から、沖縄バス27番 屋慶名線に乗車35分し、「安慶名」で降ります。
城歩き
登城口
バス停からは安慶名中央公園を目指します。公園には芝生が広がっており、その左奥に登城口がありました。右奥には石段が見えますが、闘牛場への道なので間違わないように。
登城口
登城口には安慶名城跡の碑が建てられていました。右の説明文は文字がかすれてよく読めませんでした。手前のの看板の「ハブに注意」の文字にドキドキします。
石段
登城口からは石段を上っていきますが、山奥の神社のような厳かな雰囲気がありました。ごつごつとした琉球石灰岩には無数の気孔が空いており、ここが沖縄だと実感させてくれます。
城壁への脇道
途中で右への脇道があるので入っていきます。
外郭の城壁
なんと外郭の城壁上に出ました。安慶名城は、内郭を外郭が囲む輪郭式の縄張りと云われています。ただ実際は地形に合わせて石垣を築いたため、結果的に石垣が二重になったような気がします。
外郭の城壁
外郭の城壁上を歩くことも可能です。野面積みの石垣は脆そうに見えますが、コンクリートで補強してあるようです。でもかなりスリル満点。
内郭石垣
この石垣の存在感。岩盤上に築かれた野面積みの石垣の高さは10メートル近くありそうです。これは絶対よじ登れません。
石垣の狭間
よく見ると石垣にポコっと空いたところがありました。 これは狭間なのか、落石で歯抜けになったのか?
上り石段
さて、再び石段に戻って上を目指すと、先にベンチがちらりと見えます。あそこが中間地点なのか?
安慶名按司墓
石段横には切石を組んだ遺構がありました。その時はなんだか分かりませんでしたが、後で調べたところ安慶名按司の墓とのことでした。
城内入口
石段の突き当りを右にぐるっと曲がると、巨岩の裂け目があります。ただ、ブロックのような石垣も見え、人の手が加わっていることは確かです。
城門跡
なんとこの裂け目が城門跡でした。主郭へ入るには、この岩盤の裂け目を利用した城門を潜るしかありません。すごい、凄すぎる。
城門の裏側
城門というよりも、まるで秘密基地の入口みたい。ここを埋めちゃえば、こちら側から攻め込まれることはないでしょう。ただし、逃げ道も無くなりますが・・・
主郭左側
城門から入ってすぐに巨岩があり、主郭は大きく左右に分かれています。まずは左側に進んでみます。石のベンチの微妙な異物感。
内郭城壁
野面積みで築かれた内壁城壁。柵などないのでスリル満点。コンクリートで補強されているようでした。
内外郭の城壁
先に歩いた外郭城壁。そこから更に積み上げた内郭城壁。両壁合わせて10メートル以上の高さがあり、先の城門と組み合うとまさに金城鉄壁。王府軍に攻められた際は力攻めには屈せず、水を断たれて落城したというのも納得です。確かに城内には井戸はありませんでした。
郭内部
郭内部はそれほど広くなく、せいぜい数十名が籠城するのでやっとかな。また、南西側の城壁にも上ってみましたが、かなり樹木が茂っていて、輪郭式の縄張りを確認できませんでした。
謎の狭間
郭の北西隅の城壁には、謎の狭間が空いていました。1メートル以上の厚みの城壁に狭い狭間を設けても、狙撃の役に立つような気がしません。南東にも一箇所狭間がありましたが、どういう目的だったんでしょう?
謎の石碑
郭中心部にごつごつとした岩の上に石碑が祀られていました。比較的新しくみえる石碑には、尚家の家紋と「具志久美登繁座那志(ぐしくみとうはんざなし)・中が世うみない母親)」いう文字が彫られていました。
主郭右側
城門出口まで戻って、主郭の右側に向かいます。こちらの方が左側より面積は狭いです。
拝所
拝所らしき遺構があり、石碑には「安慶名宇志仁大主」と文字が彫られていました。
内郭城壁
岩盤を上手に利用して、石垣を築いているのが分かるかと思います。
外郭城壁
先ほど歩いた外郭城壁を見下ろしてみます。安慶名城は輪郭式縄張りと云われていますが、内郭と外郭の間のスペースが狭く、出入口も無いため、人が入れるようには思えません。
安慶名城
闘牛場方面から、安慶名城を眺めてみました。現在闘牛は多目的ドームで開催され、手前の円形の闘牛場はあまり使われていないようです。
感想
野面積みの高石垣が素晴らしい城でした。岩盤の裂け目を利用した城門跡も興味深く、続100名城に選ばれてもおかしくないレベルです。ただ、城跡は整備はされてはいるのですが、他には誰にも遭いませんでした。もったいないので、もっとアピールして欲しいです。